オバマケア効果で進む米国の未病対策

オバマケア 効果で進む米国の未病対策

未病への取り組み

最近、未病という言葉を耳にするようになった人も多いのではないでしょうか。
未病とは、元々は中国語から来ており東洋医学で使用されている言葉です。簡単に言うと、「健康のように見えるけれど病気に著しく近い身体や心の状態である」ということです。つまり、見た目は健康そうでもいつ病気になってもおかしくない状態です。
この未病の状態を早く見つけることが、健康診断の役目です。最近日本で増加傾向にある生活習慣病は、一度発症してしまい動脈硬化が進行すると心臓や脳に異常をきたし、命に関わることがあります。これらの異常は初期では気付けないため、1年に1回の健康診断で採血や身体診察をすることは早期発見、早期治療の観点から非常に重要です。
日本では普通に行われている健康診断ですが、国民皆保険制度が最近までなかったアメリカはどのようになっているのでしょうか。
今回は日本とアメリカの未病への取り組み方、健康診断の違いについてまとめたいと思います。

日本の未病への取り組み

日本では学校や企業などの組織に所属していると1年に1回健康診断が行われます。また特定健診といって、1年に1回40歳以上75歳未満の医療保険加入者を対象にメタボリックシンドロームに着目した健診が行われています。メタボリックシンドロームの診断基準は腹囲が基準値以上(男性85cm、女性90cm)+血圧、血糖、脂質の検査値が規定値以上とされています。メタボリックシンドロームの診断基準に含まれる肥満、高血圧、糖尿病、脂質異常症は、それぞれ単独でも命に関わる病気(脳卒中や心疾患)を発症するリスクが高いけれども、全て揃うと死の四重奏と言われ死亡率が一気に上昇することがわかっています。メタボリックシンドロームは、日々の食生活や運動不足などの悪い生活習慣が原因となる生活習慣病とも呼ばれています。生活習慣病は日本人の死亡原因の6割を占め、国の医療費の1/3が使われているため、国としては健診によってリスクを早く見つけ予防することが大事と考えています。特定健診後に必要な場合は、保健指導が入り、生活習慣病を克服するためのアドバイスを得ることができます。実際に保健指導後にメタボリックシンドローム該当者および予備軍から約3割の人が脱出できたというデータがあるため効果はあるようです。
日本はこのように国民の経済的負担なく、企業や国が健診を行うようにサポートするシステムになっています。日本では以前から健診を行う文化があり、これは日本の終身雇用という考え方のためではないかと言われています。労働者にとって健康を維持して長く働くのが良いことで、会社は社員の健康を最後まで見るというのが当然だと考えられてきたからかもしれません。次に述べるアメリカでは、個人の健康維持は個人の責任に委ねられ、良い条件があればすぐに転職を繰り返すため根本的に日本と考え方が違います。
学校や企業で行われる健診は1年に1回が義務でもあるので必ず受けると思いますが、特定健診の受診率は半分も満たしていないという悲しい現状があります。健診をしてくれるのが当たり前の日本では、そのありがたみもあまり実感できないかもしれませんが、健康について考える、または未病を早期に発見できる可能性があるため面倒くさがらずに受けるようにしましょう。

アメリカの未病への取り組み

アメリカは、歴史的に自分のことは自分の責任であるという徹底的な個人主義の元に成り立っています。自分の健康維持もその1つであり、2014年から開始された医療保険制度改革(Affordable Care Act, ACA, 通称 オバマケア )の前までは約4800万人、国民の6人に1人が無保険でした。アメリカでは1年ごとに自分の医療保険を民間の保険会社から買うというシステムになっており、企業に属している場合は企業がほとんど支払ってくれますが、その金額は高額なため低所得の人や働いていない人は医療保険に入れない事態がよく起こっていました。企業はより良い人材を集めるためには良い医療保険を提供できるように高額な保険料を払わなくてはいけないため、会社の経済を圧迫する悩みの種です。また医療保険に入っていても、保険内容によって受けられる医療内容が異なり、時には医師や処方される薬剤なども保険会社に指定されていることがあります。このように契約した保険内容によって受けられる医療が異なるため、健診、妊娠出産に関する医療、歯科治療などが含まれているかどうかは事前に確認が必要です。このことから分かるように、日本では一律3割負担(一部1-2割)でどこの病院にも気にせず行くことができ、健診も国が率先して受けるように推奨しているシステムとは違い、アメリカでは民間の保険会社の利益が優先される恐れがあり、お金持ちだけが十分な医療を受けることができるようになっていました。2014年の オバマケア 以降は、このような状態を改善するようにいくつかの対策が提示され、同時に無保険者を減らすように努力しています。この オバマケア の内容に、健診についても言及があり、2014年度以降の保険内容には必ず1年に1回の健診を無料(自己負担なし)で受けられるように含めなければいけないことになりました。以前には、保険内容によって受けられる健診項目もまちまちだたったので統一化されたと考えられます。
アメリカは20年で、がんを22%も減少させました。これは食生活の改善と禁煙を推奨したためと考えられておりますが、現在でも肥満の割合は68%と高率で、アメリカの死因の第1位は心血管疾患で3位はCOPDです。つまり日々の生活習慣で改善できる病気による死亡が依然として高く、それに対する治療のため国の医療費も圧迫されています。今までのアメリカでは、症状が出てから、または病気がかなり進行してから病院を受診することも多かったため手遅れになる可能性も高かったそうです。生活習慣病が多いアメリカこそ、未病に対する対策として健診を推奨するべき国だと考えられます。オバマケア によって年に1回の健診が保証されてから、今後どのような変化がアメリカに現れるか興味深いです。

さいごに

日本では当たり前のように行われている健診は実はとてもありがたい制度です。
未病に早く気付いて、病気を発症する前に予防できれば自分自身にとって良いだけでなく、国にとっても良いことがわかりました。
生活習慣病によって動脈硬化が進行し、心筋梗塞や脳梗塞などを起こすとその後の生活が著しく障害されます。それだけでなく働き盛りに命を落とす可能性もあります。
年に1回の健診をうまく利用し、自分の健康を維持するように努めたいものです。

執筆監修:アメリカ在住 日本人医師 M.S
【知っておきたい】
by