高齢者医療 における日本とアメリカの違い

高齢者医療 における日本とアメリカの違い

日本は高齢化が進み、65歳以上の高齢者にかかる医療費が全体の医療費の約半分を占めているため早急に保険制度を整えるべき状況がありました。
そのため日本は2008年4月から後期高齢者医療制度(長寿医療制度)が開始され、75歳以上の高齢者や65-75歳未満の寝たきりであったり、障害をもっている高齢者は保険料を納める代わりに、所得が多い一部の高齢者を除いて1-2割負担で医療を受けられるようになりました。つまり8-9割は国が負担をしています。
一方アメリカでは、先進国で唯一国民皆保険制度がなく企業や個人で民間の保険に入ることがほとんどです。65歳以上になると、国が提供する公的医療保険(メディケア)に加入するか、高い保険料を払いながら民間の保険に入り続けます(両方に入ることもできます)。低所得の人は保険に入ることができず、いわゆる無保険者は4800万人と言われています。オバマ大統領が国民皆保険を目指していくつかの改革を行い、2014年1月から通称オバマケアが始まりましたが現状はまだ改善していないと言えます。高齢者医療や介護への対応は依然として遅れており、未だに無保険者の問題も解決されていません。
今回は高齢者医療における日本とアメリカの違いについてわかりやすくまとめたいと思います。

アメリカの保険制度の問題点

アメリカ人の破産理由の約60%は医療費で、80%は保険に入っていたというデータがあります。つまり保険に入っていてもカバーしきれなかった医療費が数百万円―数千万円になることもあり負債を負うことがあるということです。国民皆保険制度がないため、医療費は全額自己負担か、個人か企業を通じて入っている民間の医療保険にカバーされるしかありません。民間の医療保険会社は、基本的には損をしたくないので申請された医療費をカバーするかしないかを厳しく査定します。高い保険料を払えば払うほど自己負担額は減りますが、その分年間200万円以上も支払うこともあります。また、医師や病院、薬についても保険会社が指定してくることもあります。そのため保険の有無を確認され、医療費が払えないような患者さんは診察してくれないこともあります。日本のように、保険証を持って好きなクリニックや病院に行って一律3割負担とは全く違います(高齢者は1-2割負担)。
アメリカにも公的医療保険はありますが、加入できる人は限られています。メディケアとメディケイドという2つの保険が、連邦政府または州政府によって提供されています。メディケアは65歳以上の高齢者と身体障害者、慢性腎不全患者(透析や腎移植が必要な患者)が加入できますが、メディケアタックスを10年間払わないと加入できません。メディケアタックスを10年間納めていない人は、今までのタックスの支払い期間に応じて毎月の保険料が決定され、それを毎月支払えば加入することができます。これは高齢者のための国の保険ではありますが、日本でイメージするような外来や入院、処方箋に関わる医療費を全てカバーされるようにしようと考えると月に1.5-6万円(今までのタックスの支払い期間により金額が違います)の保険料を支払わなくてはいけません。
低所得者に対しては、メディケイドという公的医療保険があります。メディケイドは、メディケアと違い、州ごとに規定が異なります。また、メディケイドにはいくつかの種類があり、個人の収入や病気の種類、治療の内容によって当てはまるものが違います。例えば外来だけカバーできるものや、入院も外来もカバーできるものなどがあります。

高齢者医療 における日本とアメリカの違い

アメリカはこのようにいつでも、民間の保険会社がどれだけカバーしてくれるかで医療をどれぐらい受けられるかが決まります。そのため 高齢者医療 に関しても、例えば脳梗塞で入院した後のリハビリは保険でカバーしていないため受けられないということが起こります。国の公的保険であるメディケアも病気を治すことに重点を置いており、その後のリハビリや介護費用は含まれていません。そのためほとんどの高齢者が自宅で介護を受けており、それを担っているのは家族である女性(娘やお嫁さんなど)です。彼女たちは介護のために働けないため、その経済的損失は大きく社会問題となっています。
つまりリハビリや介護までカバーしているような高い保険料を払わないと入れない民間の医療保険に入っているようなお金持ちしか、介護施設やナーシングホームに入れません。入院中から積極的にリハビリを行う日本とは大きく違います。
またアメリカの介護施設は民間経営で、すでに述べたように高いお金を払わないと入れないので、従事している人には高い給料が支払われ、充実したサービスを提供します。日本では、介護施設で働く人の低賃金、過剰労働が問題になっています。
またアメリカでは1つの敷地内に、様々な介護レベルの人に対応できるような施設があることが、介護レベルが上がった場合に場所を移動しなければいけない日本との違いです。

さいごに

いかがでしたでしょうか。
アメリカと比較すると国民皆保険制度が整った日本では、世界的に見ても水準の高い医療を安い保険料で受けられているといえます。
一般的に 高齢者医療 にはお金がかかることが多いため、自己負担額が1-2割と決まっているのは幸せなことです。アメリカでは自分が入っている保険会社に自己負担費だけでなく受けられる医療も左右される可能性があります。
福祉国家と言われているスウェーデンは、25%という高い税率で医療や福祉が支えられています。
税率が上がるたびに不満を感じることがあるかもしれませんが、日本の税率は先進国の中ではまだ低いほうですし、高齢化社会の医療や福祉を支えるためには今後の上昇も仕方がないとも言えます。
他国と比較すると自国の良い点も見えてきて、時に理不尽に思える国の政策にも納得できるかもしれません。

執筆監修:アメリカ在住 日本人医師 M.S
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