人間ドックが行われているのは日本だけ?

人間ドックが行われているのは日本だけ?

人間ドックとは、船が定期的に陸の上のドックに入って点検を受けることを人間にあてはめ、一般の健康診断には含まれていないけれど必要と感じる検査を1年に1回自費で行うことを意味します。人間ドックには目的別に様々な種類があり、3日ドックや脳ドックなど自分の体の状態や年齢を考慮し選択します。
アメリカには人間ドックという言葉はありません。代わりにExecutive check-upというものがありますが、高額で一般の人が行うことはあまりありません。
日本とアメリカの自費で行う検査に対する考え方の違いや種類についてまとめてみます。

日本での人間ドックについて

日本は学校や企業に所属していると1年に1回は健康診断を受けることになっており、40歳以上75歳未満の医療保険加入者を対象にメタボリックシンドロームに着目した特定健診も行われています。また大腸がん検診(便潜血検査)や子宮頸がん検診、乳がん検診なども行われており、アメリカに比べると以前から手厚く健診が行われています。
しかし一般的な健診では行われない、腹部超音波検査や上部消化管内視鏡(胃カメラ)、下部消化管内視鏡(大腸カメラ)、脳MRI検査、PET検査などを自費で受ける人もいます。これを人間ドックと呼び、年間300万人以上が受けていると言われています。日本人に多い胃がんや最近増加傾向の大腸がんは、胃カメラや大腸カメラをしないと直接確認することができないので検査をする価値はあります。また腎臓がんや膵臓がんなどは、大きくなって症状が出た時には手遅れになることも多いため定期的な腹部超音波検査は有用と考えられます。
ただ日本で人気のある脳ドックは賛否両論で、そもそも悪性腫瘍ができにくい脳を検査し、未破裂脳動脈瘤が見つかってしまった場合に患者に与える不安が大きいだけであるとも言われています。未破裂脳動脈瘤は年間に破裂する確率は0.05%で、20年経過しても1%です。未破裂脳動脈瘤に手術をすることはリスクの方が大きいと考えられています。
また日本で人気のPET検査ですが、小さながんでも見つけられると期待する人も多いですが見つけられないこともありますし、そもそもがんの転移を含めた広がりや再発チェックのために用いられる検査なのでがんを早期に見つけるために使用しているのは日本くらいだと言われています。
人間ドックは大体10万円程度のことが多いですが、PET検査を加えるとより高額になります。

アメリカでのExecutive check-upについて

アメリカは最近まで国民皆保険制度ではなかったため、それぞれの入っている民間会社の保険によって受けられる医療に差がありました。1年間に1回の健診はカバーされることが多いですが、保険によっては含まれていなかったり、簡易なものだけであることもありました。2014年から医療保険制度改革が実施され、民間の保険会社に1年に1回の健診をカバーすることが義務付けられました。そもそもアメリカでは、健康な人に様々な検査をして偽陽性(本当は病気ではないのに検査では異常と出てしまうこと)が無駄にたくさん出て、人々に不安を与え、精密検査のための費用が高額になることに対して否定的なため日本のような健診は積極的に行われていませんでした。ただし、かかりつけ医に相談すると家族歴や生活習慣などを考慮し、起きる可能性のある病気に対する検査を勧められることはあります。日本では喫煙者に対して胸部X線撮影や胸部CTを施行することがありますが、アメリカでは症状もないのに行うことは無意味と考えられておりガイドラインにもそのように記載されています。今までの臨床研究の結果から、症状がないうちから早めに検査を行っても肺がんで死亡する可能性は変わらないということがわかっているからです。
アメリカでは全てにおいて個人主義で、健康も個々の責任に委ねられています。お金があり、意識が高いアメリカ人は自費で高額な費用を払い日本の人間ドックのような検査を受けることもあります。アメリカには人間ドックという言葉ありませんが、Executive check-upといって会社の幹部や管理職の人を対象に、数千ドル(日本円だと数十万円)を要する検査が行われています。リゾート地に何泊かして、健康的なグルメ食を食べ、トレーナー付きで健康のための運動をしながら人間ドックの様な検査を一通り行うサービスもあります。低額のスパイラルCTや日本の健診車のように超音波や心電図をもって移動して健診を行う会社もありますが、いずれにしろ保険は効かないのでお金持ちしか受けていません。

さいごに
日本にもアメリカにも一般健診に自費で追加して行う検査はあるようですが、アメリカではより高額のようです。
最近では医療ツーリズムといって、日本の医療レベルが高水準なため中国人の富裕層やアメリカ人、ヨーロッパ人が日本の 人間ドック を受けに来ているようで経済効果もあるそうです。
健康を維持するために様々な検査を行うことは悪いことではありませんが、自分にとって必要な検査を見極め、結果をどう解釈するかもきちんと考えるようにしましょう。

執筆監修:アメリカ在住 日本人医師 M.S
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