COPD(慢性閉塞性肺疾患)は死より怖い理由

COPD(慢性閉塞性肺疾患)が死より怖い理由

死よりも悲惨な状態になるCOPDとは

タバコの煙が90%以上の原因と言われているCOPD(慢性閉塞性肺疾患)は、死に至る進行性の肺の病気で、呼吸ができずに苦しみながら亡くなります。イギリスからの報告では、COPDの症状が増悪して入院した患者の80%が死よりも悲惨な状態だったと表現したと言います。WHO(世界保健機構)は、世界で約2億1000万人がCOPDを発症し、毎年約300万人が亡くなっており2030年までに死因の第3位、身体障害の原因の第5位になると予想しています。また、COPDによる死亡者数は、治療や禁煙などを行わないと今後10年間で30%以上増加すると推定されています。そのため、WHOは若者を守るためにもタバコ規制を推進してきました。2005年から日本を含めた加盟国によりタバコ規制枠組条約 (FCTC)が発効され、タバコ税や価格の引き上げ、受動喫煙の防止、タバコの包装の警告表示、禁煙治療の推進などが内容に盛り込まれています。

今回は日本とアメリカにおけるCOPDの現状をわかりやすくまとめたいと思います。

日本におけるCOPDの現状と対策

COPDとは主に喫煙により有害物質を長期間吸い込むことにより肺に炎症を起こして破壊してしまう病気です。この病気はがんよりも認知度が低く、初期症状で発見しにくいため呼吸が苦しくなって病院を受診した時には手遅れのことも多いと言われています。日本には潜在的にCOPDである患者は530万人(40歳以上の8.5%)と言われていますが、実際に受診している人は22万人しかいないと報告されています。また最近では患者の1割が非喫煙者で、受動喫煙の防止、PM2.5などの公害対策も重要と考えられています。受動喫煙とは、自分が吸っていなくても喫煙者の近くで副流煙を吸ってしまうことで、喫煙者と同等、またはそれ以上にCOPDや肺がんによる死亡率が上昇するため問題となっています。実際に日本からは、喫煙者の夫をもつ妻の方(自身は非喫煙者)が、喫煙しない夫の妻よりも死亡率が高く、それはタバコの量に比例し、肺がんになるリスクは30%増加すると報告されました。また、家の中で換気扇の下やベランダなどで吸っていたとしても、その子供の尿中に含まれるニコチン濃度が非喫煙者の子供に比べて高いこともわかり、目に見える煙を気にしているだけでは受動喫煙は防げないことも明らかになりました。受動喫煙によって吸い込む副流煙には、発がん物質が主流煙の100倍という恐ろしいデータもあります。

日本では約16000人がCOPDで死亡しており、死因の第10位となっています。COPDの原因になる喫煙率は、全体では19.3%、男性32.2%、女性8.2%となっています。1960年代に男性の喫煙率は80%だったので減少傾向ですが、先進国の中ではまだ高いと言われています。また、20-29歳の若年女性の喫煙率が高く、COPDや肺がんのリスクだけでなく、卵巣機能低下、胎児異常、子宮頸がん、ピル内服中は血栓症を引き起こす可能性があるため注意が必要です。女性は、男性に比べると肺が小さく、肺機能も男性より低く、気道も細いため生理的にCOPDや肺がんなどの肺の病気になりやすいので同じ量の喫煙量でも女性の方がより健康を害する危険があります。

喫煙は肺がんの原因にもなり、日本では男性のがんによる死亡原因の1位、女性では第2位です。

これらの状況を鑑みて、日本でも2003年5月から受動喫煙防止を掲げた健康増進法が開始され、学校や病院、飲食店などの公共施設で禁煙となり、2007年からは新幹線が禁煙化され、翌年からはタクシーも東京都、千葉県、長野県、福井県、大分県など都道府県レベルで禁煙化が進みました。日本呼吸器学会は喫煙している医師は入会できないことになっており、その証明のために自身の署名が必要です。それくらい医師は、喫煙がCOPDや肺がんをはじめ様々ながんを引き起こす有害なものであると認識しています。

ちなみにこの後に述べるアメリカは、ここ20年間でがんによる死亡率を22%も減少させました。これは禁煙や食生活の改善によるところが多いと言われているので、日本も禁煙と食生活の欧米化を抑制することをもっと推進すべき時かもしれません。

アメリカにおけるCOPDの現状と対策

アメリカではCOPD患者が約2700万人存在し、約14万人が毎年COPDで死亡し、死因の第3位となっています。アメリカ胸部学会国際会議では、2001年の時点で女性のCOPD死亡者が急増していることを懸念していました。先ほど述べたように、女性は生理的にも喫煙が不向きなこともありますが、ダイエットなどで喫煙しており、禁煙する人が男性よりも少ないのが原因と考えられています。アメリカの喫煙率は全体では19.0%で、男性は21.6%、女性は17.2%と日本に比べると男女比があまり変わりません。欧米の女性は日本の女性に比べて体格が大きい人もいますが、それでも男性に比べるとCOPD、肺がんを生理的に引き起こしやすいことがわかっているので喫煙は控えるべきでしょう。実際に肺がん・気管支がんが男女ともにがん死因の第1位です。

COPDは咳や息切れを引き起こすので、患者の身体機能やQOLに大きな影響を与えます。高齢者の疾患と考えている人もいますが、実際の患者の50%は65歳未満で、欠勤および早期退職を増加させると分かっており、労働参加の減少、それによる経済的損失を増大させると予想されています。2013年にアメリカで行われたCOPDの州別発症率およびCOPDによる様々な活動制限に関する研究では、全体の6%でCOPDを発症しており、18-34歳(2.6%)から年齢に伴い増加し、75歳以上では12.3%ということがわかりました。また、就労者(3.6%)、高学歴(大卒:4.6%)、既婚者(4.7%)の人において、COPD発症者が少ないことが分かりました。アメリカでは他の疾患にもよく見られる傾向ですが、高学歴や経済的に余裕がある人は正しい知識を身につけ、自身の健康を気にしている意識の高い人が多いです。COPD患者の1/3以上(38%)は喫煙者で、就労不能者は24.3%、歩行または階段を上がることが困難な人は38.4%、健康上の問題から特殊な装置を使用している人は22.1%でした。COPDと診断された時には、疾患が進行しないように努めることが大切で、喫煙は運動機能障害を引き起こすため禁煙を推奨すると結論づけています。

アメリカも喫煙による身体、また社会への影響を考え、現在では多くの州が職場や公共における喫煙の法的規制を設けています。ハワイ州では、喫煙に対して最高50ドルの罰金が科せられることがあります。

まとめ

自分の力ではどうしようもない病気が多い中で、COPDはほとんどが喫煙によるので、タバコを吸っている人は自らを病気にしているようなものです。

またCOPDは、肺を傷つけて最終的には呼吸困難に陥り死亡してしまうだけではなく、脳卒中(脳梗塞、脳出血)や心血管障害(心筋梗塞など)、うつ病、睡眠障害を合併するリスクも高いと言われています。

禁煙はいつからでも遅くありません。

でも実は、日本の喫煙者の60%がやめたいと思っていて、半数は4-5回やめようとして失敗しているそうです。これは自分の意志が弱いのではなく、ニコチン中毒といって脳のニコチン受容体がニコチンなしではいられなくなっているせいです。麻薬と同じメカニズムで、タバコをしばらく吸っていないと体が禁断症状を起こし、イライラしたり集中できなくなります。最近は禁煙外来という禁煙専門の外来を設置している病院もあり、治療薬も様々で保険も効きます。成功率も60-70%なので、自分で禁煙するよりも効果が高いです。
禁煙はCOPDの進行を止めるだけでなく、10年後には肺癌での死亡率を喫煙者の半分にも下げることができます。受動喫煙によって、大切な周囲の人をCOPDや肺がんにしないためにも禁煙を心がけましょう。

執筆監修:アメリカ在住 日本人医師 M.S
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